カルビはどこの部位?定義はあいまいで店によって違う理由
焼肉屋のメニューを開いたとき、まず注文したくなる不動の人気メニューといえばカルビではないでしょうか。
甘みのある脂と赤身のコクがちょうどよく調和していて、リーズナブルな一皿から上質な霜降りまで、幅広い楽しみ方ができるお肉です。
とはいえ、そのカルビが牛のどの部分から取られているのか、あらためて考えたことがある方は少ないかもしれません。
カルビというのは、実は牛肉の部位を示す正式な呼称ではないのです。
大きくくくれば、あばら骨まわりのバラ肉全般を指す呼び方であり、どこまでをカルビと呼ぶか、上・特上の線引きをどこに置くかはお店ごとの判断に委ねられています。
語源をたどると韓国語で「あばら」を表す言葉にたどり着き、日本の焼肉店ではその周辺にある脂のつき方や食感の異なるさまざまな部位が、まとめてカルビとして提供されています。
ここでは、あまり知られていない呼び名の背景と、三角バラやカイノミといったカルビとして扱われる代表的な部位ごとの特徴をくわしく紹介します。
カルビはどこの部位ではなくメニュー名?
カルビとは特定の部位を指す正式な名称ではなく、韓国語であばら(肋骨)を意味する言葉(갈비)が起源とされています。
農林水産省が定める『食肉小売品質基準』では、牛肉をネック・かた・かたロース・リブロース・サーロイン・ヒレ・ばら・もも・そともも・ランプ・すねの11の主要部位に分類していますが、この11部位の中に『カルビ』という独立した項目は存在しません。
つまりカルビは公的な大分類名ではなく、バラ肉を焼肉用に細分化した呼び名であり、焼肉店や精肉店が用いるメニュー名ということです。なお同省の『牛の部位図鑑』では、11の主要部位とは別に焼肉店向けの細かな部位として『カルビ(タテバラ/Short Rib)』が挙げられ、“カルビは韓国語で「あばら骨の肉」の意味。一般的にばら肉のことを指す”と説明されています。同じ図鑑にはゲタカルビ(中落ち)・カイノミ・三角バラ・ブリスケ・カッパといった、焼肉店でカルビとして出される細かな部位も並んでいます。
先ほど触れた通り、『カルビ』とはもともと韓国語で“あばら”を意味する言葉で、韓国では骨付きのバラ肉(ショートリブ)を意味する物でした。
日本で焼肉文化が広がる中でこの呼び名が定着し、やがて『バラ肉を中心とした脂身が多い部位を総称』してカルビと呼ばれるようになったのです。
実際、お店でも中落ちカルビや上カルビなどの独特な名称が存在し、同じカルビでも使われる部位やサシの入り方が異なります。
一般的な認識としては、部位を限定せず『脂が十分にのった旨味が強いあばら周辺のバラ肉』と覚えておくと良いでしょう。
なお、焼肉店でカルビと並んで人気のハラミやサガリは、バラ肉ではなく横隔膜の筋肉です。農林水産省の部位図鑑でも『ハラミ(横隔膜)』と表記されており、日本食品標準成分表でもロースやももと同じ正肉ではなく〔副生物〕の『横隔膜』として収載されています。同じ焼肉のメニューでも、カルビとハラミは肉の系統そのものが違うと覚えておくと選びやすくなります。
一般的に『カルビ』と呼ばれる具体的な部位
カルビはあばら骨周辺のバラ肉を中心に使う名称ですが、具体的には下記の部位を指すことが主となっています。日本食肉格付協会が定める『牛部分肉取引規格』は枝肉を13の部分肉に分けており、バラは前側の『かたばら(肩バラ・前バラ)』と、後ろ側の『ともばら(トモバラ)』の2つに区分されています。規格ではまず第6〜第7肋骨間で枝肉を前後に切り分けるため、かたばらはおおむね第1〜第6肋骨のあたり、ともばらはそれより後ろのお腹側にあたります。なお、トモバラをさらに背中寄りの『内バラ(中バラ)』と腹側の『外バラ(そとバラ)』に分ける呼び方は規格上の区分ではなく、精肉店や焼肉店で使われている慣習的な小分けです。
ちなみに私は焼肉は好きですが、脂身が多いお肉を沢山食べることができません。同じような方は、赤身が多い肩バラやカイノミを選ぶと良く、程よい脂のおいしさを感じやすいのでおすすめです。
逆にこってりした脂の甘みを楽しみたい方は、霜降りが細かく入る三角バラや、赤身と脂が層になった外バラがおすすめ。
焼肉店などではカルビを注文する際に使っている具体的な部位を確認して、サシの入り具合を予想すると良いでしょう。
また、同じ『バラ』でも脂の量によってカロリーは大きく変わります。文部科学省の『日本食品標準成分表(八訂)増補2023年』では、和牛のばら(脂身つき・生)が可食部100gあたり472kcal・脂質50.0g、輸入牛のばら(同)が338kcal・脂質32.9gとされています。和牛と輸入種を掛け合わせた交雑牛のばらはその中間で、445kcal・脂質44.4gです。同じカルビでも牛の種類によって脂質量に差があるため、脂の重さが気になる方は部位だけでなく肉の種類にも目を向けてみてください。
肩バラ
肩バラは、牛の前足側・肩から肋骨のあたり(前脚の付け根あたり)に位置するバラ肉で、『前バラ』とも呼ばれます。
良く動かす発達した筋肉部位を含むため比較的赤身が多く、しっかりとした食感が特徴の食べ応えがある味わいが魅力。赤身と脂のバランスが良いため、飲食店でも定番のカルビとして使われます。
一方で、運動量が多い部分は肉質が締まりやすく、焼き方によっては硬くなりやすいため、短時間で表面を香ばしく焼くのがポイントです。肩バラはさらに『ブリスケ』『三角バラ』などに分けられ、焼肉店でも定番のカルビとして提供されるカルビの王道部位といえるでしょう。なお農林水産省の部位図鑑では、ブリスケは前脚の付け根から胸にかけてのあたりにある肩バラの一部で、赤身と脂身がほぼ半々、コラーゲンを多く含み噛むほどに濃厚な旨味が出る部位として紹介されています。繊維質でやや硬めなので、焼肉なら薄めのカット、かたまりで買ったときは煮込みにすると持ち味が生きます。
三角バラ
三角バラは肩バラの一部で、第1〜第6肋骨のあたりから三角形に切り出される希少部位として知られています。
脂を落として成形すると一頭あたり2〜4kg程度しか取れないといわれるほど量が限られ、サシが細かく美しく入っている特徴があり、焼肉店でも『特上カルビ』や『上カルビ』とした特別なメニューで提供されることが多い様子。
濃厚でとろけるような食感が人気の理由で、見た目と味の良さも相まってカルビの王様と呼ばれる高級部位です。
ミスジ
ミスジは肩甲骨の裏側(内側)にある赤身肉で、一頭からわずか2〜3kg程度しか取れない非常に希少な部位です。
肉の中央とその上下に3本の筋が通っていることが名前の由来とされ、あまり動かない部位のため豊かで細やかなサシが入った柔らかい霜降り肉として頂くことができます。
なお、ミスジは厳密にはバラ肉ではなく『ウデ(肩)』に分類される部位ですが、サシの美しさと希少性から多くの焼肉店で『上カルビ』『特上カルビ』として提供され、カルビメニューの代表格として親しまれています。脂の融点が低くサラリとしているため脂っこさやしつこさが少なく、とろけるような贅沢なお味が楽しめるでしょう。
中落ちカルビ
中落ちカルビは、トモバラ(内バラ=中バラ)にある肋骨と肋骨の隙間のお肉を指します。肋骨に沿って切り出されたお肉は独特な形をしているため、骨間カルビや『ゲタカルビ』と呼ばれることも。ゲタという別名は、肉を外したあとの肋骨の並びが下駄の歯のように等間隔に見えることに由来するといわれています。
赤身と脂身が層になっているのが特徴で、農林水産省の部位図鑑でも『ばら肉の中ではやや硬めの肉質で、こってりとした濃厚な味わい』と紹介されています。ただし焼肉では薄くカットして出されることが多く、焼くうちに脂が落ちるぶん、見た目ほど重たく感じにくいのがこの部位のおもしろいところです。
実際、脂身が苦手な私自身も好んでおり、強火でサッと短時間で香ばしく焼き上げるとかなり食べやすくなるお肉です。
比較的手頃な価格で提供されることも多く、焼肉店では人気の高い定番部位です。
カイノミ
カイノミはトモバラ(内バラ)のうちヒレに近い赤身寄りの部位で、わき腹あたりにあり、わずかしか取れない希少部位として知られています。切り出した形が貝に似ていることが名前の由来とされます。
赤身がメインのお肉ですが適度に脂も入っているので、脂身が苦手な人でも上質な柔らかさとさっぱりとした味わいの良さで楽しむことができます。ヒレ肉のすぐ近くにあるため、赤身の旨味と柔らかさを併せ持つのが魅力です。
特別メニューとして提供されるような非常に希少性な部位ですので、見かけたらぜひ試してみてください。
外バラ(トモバラ)
外バラ(そとバラ)は、トモバラの中でも腹側の下部にあたるお肉です。トモバラは背中寄りの『内バラ(中バラ)』と腹側の『外バラ』に分かれ、外バラからはカッパやフランク(ササバラ)などが取れます。
赤身と脂身が層になり脂のりが良いのが特徴で、厚みのあるカットで食べるのがおすすめ。いただく際は中火でしっかりと焼くことで脂がほどよく溶けだして柔らかくなり、タレとの相性も抜群。
外バラは比較的リーズナブルで焼肉店でもカルビとして並ぶことが多いため、幅広い層に食べられているカルビの王道的部位でしょう。
ササバラ
ササバラは外バラ(ソトバラ)の後方、カイノミの下側からももの付け根側(おへそからわき腹のあたり)にある希少部位で、一頭から取れるのは2〜3kg程度(およそ2.5kg)といわれます。名前の通り繊維が縦に入り、形が笹の葉に似ていることが由来とされ、『ササミ』『フランク』『笹肉』とも呼ばれます。
脂身と赤身のバランスが非常に良く、サシが多く見えても脂はさっぱりしていて脂っこすぎないほどよいジューシーさが非常に美味しく、筋や膜が少ないため柔らかさも申し分ありません。
焼肉の際は薄くカットしてサッと炙るだけでOK。しつこい脂っぽさはなく、タレ・塩焼きどちらも美味しい定番メニューとして親しまれています。A5クラスの霜降りになると、上カルビ・極上カルビとして提供されることもあります。
上カルビや特上カルビとの違いは?
上カルビや特上カルビは特定の部位を指す名称ではなく、品質や肉質の差で分けられることが多い様子です。
つまりいずれも『カルビ=あばら骨周辺のバラ肉』というのは変わりありませんが、より上質な部位を使っているお肉が上・特上カルビと考えると良いでしょう。
- 上カルビ・特上カルビ…サシの入り方が美しい霜降り肉や希少部位(三角バラ・カイノミ・ミスジ・ササバラなど)
- カルビ…部位の総称
ただし、上や特上と呼ばれるお肉に基準は決まっておらず、焼肉店が独自の基準で判別するためお店によって肉質は異なります。精肉として小売販売される食肉には、景品表示法にもとづく『公正競争規約』(食肉の表示に関する公正競争規約)で種類と部位を表示するルールがある一方、飲食店のメニュー名には同様の統一ルールがありません。これが、同じ『上カルビ』でも店ごとに中身が変わる背景です。とはいえ飲食店のメニューにも景品表示法は適用され、消費者庁は成形肉を『ステーキ』と表示したり、外国産牛肉を『国産和牛』と表示したりするような、実際のものと著しく異なる表示を問題のある例として挙げています。店ごとに基準が違うのは上・特上といった等級表現の話であり、肉の種類や産地まで自由に名乗ってよいわけではありません。
なお肉質の客観的な目安になるのが、牛枝肉の格付けです。歩留等級(A〜C)と肉質等級(1〜5)の組み合わせで表され、脂肪交雑(サシ)・肉の色沢・締まりときめ・脂肪の色沢と質の4項目で評価されます(農畜産業振興機構)。このうち脂肪交雑は牛脂肪交雑基準(BMS)でNo.1〜No.12の12段階に数値化され、BMS No.8以上が肉質等級5に相当します。歩留等級は枝肉から取れる肉の割合を示す『歩留基準値』で決まり、72以上がA、69以上72未満がB、69未満がCです。肉質等級のほうは4項目を個別に判定したうえで、そのうち最も低い等級がその枝肉の肉質等級になるため、サシがたっぷり入っていても肉の色沢や締まりが劣れば全体の等級は下がります。この2つの組み合わせでA5からC1までの15段階に格付けされるため、A5などの表記があれば、上・特上の判断材料のひとつになります。
【まとめ】カルビはあばら骨周辺のバラ肉の総称!含まれる部位を知ると美味しいメニューに出会いやすい
カルビは部位名ではなく、バラ肉を中心とした焼肉のメニュー名が広く浸透したものです。
カルビと一言でいっても三角バラ・カイノミ・ササバラ、さらにはウデ由来のミスジなど、サシの入り方が異なるため、好みに応じて選ぶとさらに美味しく焼肉を楽しむことができます。
「脂身が苦手…」「でもお肉らしい脂の味も楽しみたい」
そんな方でも十分に美味しくいただける部位もあるので、ぜひお店で焼肉を頂く際は意識して選んでみてくださいね。
また、脂の多いカルビを安心して味わうには、焼き加減にも気を配りたいところです。厚生労働省は食中毒予防の目安として、肉は中心温度75℃で1分間以上の加熱が重要としています。生の肉をつかむトングや箸は、取り分け用と分けておくとより安全です。
お店だけでなく、買ってきたカルビを家でおいしく焼くコツを知っておくと、おうち焼肉でもお気に入りの部位をより一層楽しめます。
GYRO HOLDINGSでは、シーンに合わせた多彩な焼肉店を展開しています。
ぜひ、お近くの店舗に足を運んでみてください。